複数形が不規則な名詞・不規則複数形の名詞のルールと由来
皆さんこんにちは。マリです。今回の記事は読者の方から頂いた「名詞の複数形のルール」に関する質問に答えてみたいと思います。
英語を勉強している皆さんはご存じだと思いますが、一般的に英語の名詞を複数形にするには「s」または「es」を付けるだけです。しかし、例外もたくさん存在しています。
例えば「mouse」(ねずみ)の複数形は「mouses」ではなく「mice」になります。特に英語の名詞の複数形は例外が多いため、外国人の英語学習者にとっては覚えにくいと思います。
実は非英語圏の国の英語学習者だけではなく、英語圏の子供にとっても名詞の複数形は覚えにくいと思います。小さい子供はよく間違えて不規則複数形の名詞に「s」を付けてしまう場合が多いです。
そこで今回は、不規則複数形の名詞がある理由や、その覚え方についての質問があったので、それについて詳しく解説してみたいと思います。
それでは、実際に頂いた質問はこちらになります。
読者の方の質問:
fishには通常、複数形も(e)sをつけないが、「魚の種類」を意識する場合はfishesとなる、という趣旨の説明がありました。
辞書や参考書にも同じように出ていますが、なぜ通常は(e)sをつけないのかという説明がありません。また、魚でもcarp/salmon/codなどは単複同形だと覚えていますが、魚はすべてそうなんですか。
なお、動物でもsheep/deerは単複同形だと習いますが、cow/horse/lionなどはそうなりませんね。どこか違うのでしょうか。
ネイティブスピーカーはどのように理解しているのでしょうか。特に子供が疑問を持ったら親や先生はどう説明するのでしょうか。
日本だったら、例外として覚えなさい、ということで済まされることになると思いますが。
いつもマスターランゲージをご覧頂きありがとうございます。そしてご質問ありがとうございます。この質問に答えるには複数形のルール、由来等についても説明する必要があるので、それぞれパーツを分けて質問に答えてみたいと思います。
英語の「不規則複数形の名詞」が存在している理由とは?
まずは、英語の不規則複数形の名詞が存在している理由についてクローズアップしてみましょう。この質問に答えるためには、英語という言語の歴史を理解する必要があります。
現在、話されている英語は数千年もの間で進化してきた言語です。現在使われている英単語には色々な由来があります。例えば、ゲルマン語、ラテン語、ギリシャ語、フランス語といったルーツがあります。
つまり、現在の日本語と同じように現在の英語にも色々な言語からの外来語が吸収され使われています。一般的には、ゲルマン語由来の古い英単語はゲルマン語の文法ルールをそのままつかっており、「不規則複数形の名詞」となっています。
例えば、「fish」という英単語は元々ゲルマン語から来た単語です。現在のドイツ語では「fisch」という単語になっていますので、同じ由来だと簡単にわかると思います。
ゲルマン語由来の名詞は一般的に複数形にするには「~er」、「~en」、「~e」を単語の後ろにつけます。単語によっては何もつけません。現在のドイツ語でも同じように複数形を作るそうです。
そのことから、「fish」の複数形は「fish」になります。他にもいくつかの例があります。代表的なものをあげると。
- deer → deer (鹿)
- goose → geese (ガチョウ)
- child → children (子供)
- ox → oxen (牡牛)
- woman → women (女性)
- man → men (男性)
- foot → feet(足)
上記の例は全てゲルマン語由来の単語です。しかし、ゲルマン語由来だからと言って「不規則複数名詞」になるわけではありません。ですが、多くの場合、このような単語はゲルマン語由来の単語です。
ラテン語とギリシャ語由来の単語も数多くあります。例えば「stadium」(スタジアム)はラテン語由来の単語です。「stadium」の複数形は正しくは「stadia」になります。しかし、現在の日常英会話では「stadiums」という言い方を使う人が多いと思います。
実は「bacteria」(細菌)も複数形の名詞です。単数形の場合には「bacterium」を使うべきです。ラテン語由来の名詞は多くの場合上記の二つの例と同じように「~a」という複数形になります。しかし、他の語尾もあります。例えば、「formula」(方式)の複数形は「formulae」になります。
まとめると、名詞の複数形はその単語の由来によって異なります。新しく出来た単語は多くの場合「~s」という複数形になりますが、その昔、英語に新しく入った単語は大体が外来語で元々の言語の複数形のルールをそのまま使っています。特にゲルマン語、ラテン語、ギリシャ語の単語はそういったルールに沿って複数形になります。
魚の種類も複数形はないのでしょうか?
読者の方がおっしゃる通り「fish」の複数形はそのまま「fish」になります。そして、魚の種類も同じルールを使います。つまり、「cod」(タラ)の複数形も「cod」になり、「salmon」(鮭)の複数形も「salmon」です。
「fish」と「cod」は両方ともゲルマン語由来の名詞なので、ゲルマン語の複数形のルールを従います。しかし、「salmon」はゲルマン語のルーツではなくラテン語由来の単語です。
そして「carp」(鯉)はゲルマン語由来の単語なので複数形はありません。
ラテン由来の「salmon」が不規則複数形の名詞になった理由は残念ながら不明ですが、おそらく他の魚と同じように扱われるようになったのではないかと推測されます。一般的に魚の種類は「s」をつけません。
しかし、これにもやはり例外があります。「shark」(サメ)の複数形は「sharks」になります(笑)。このルールにも明確な理由はありませんが、おそらく大きい魚の複数形は「~s」になるではないかと推測されます。
英語ネイティブはどうやって不規則複数形の名詞を覚える?
それでは、どうやって英語ネイティブの子供が不規則複数形の名詞を覚えるのでしょうか。実はこれは先程も少し話しましたが、英語ネイティブの子供は不規則複数形の名詞を間違える傾向があります。
一般的に子供ははっきりしたルールとパターンを好みます。そのために、小さい子供の頭の中では「複数形にするためにはsを付ける」というルールが入っています。
ですから、小さい子供は不規則複数形の名詞を覚える前にとりあえず「s」を付けるという傾向があります。何故なら、彼らはそれが決まって正しいルールだと思っているからです。
一般的に言語の知識が増えるとともに、少しずつ正しい文法や言葉のニュアンス、言い方を覚えていきます。英語圏の国の親達は別にそういったルールを説明しなくても、子供は周りの人達が使っている単語を真似するだけです。
しかし、そうは言っても、やはり子供は親達に「なぜsをつける時とつけない時があるの?」という質問を尋ねる事があります。
その場合、多くの親は不規則複数名詞についてのルールを正確に説明できないと思いますで「特に理由はないよ。そうやって覚えるしかない」といったように説明するだけです。
残念ながら、日本人の英語学習者も英語ネイティブの子供と同じように「単純に覚えるしかない」と思います。不規則複数名詞を見るたびに「あ、これはゲルマン語由来の単語だろう」と思いつくかもしれませんが、結局は沢山の英語ネイティブが作った正しい例文をインプットしながら覚えるしか方法はありません。
これではこれで以上になります。他にも別の質問がある方は是非ご連絡くださいね!